保坂壮彦日記

ALL IS LOVE IS ALL

剛さんへ捧げた音楽

 

 

佐藤剛こと、剛さんの『偲ぶ会』が先日、執り行われました。『X』にポストした通り、私、保坂壮彦、『音楽担当』として当日参加いたしました。その際、セレクトした楽曲をこのブログで紹介いたします。

ここからは、かなりの文章量で、僕と剛さんの想い出をたっぷり書き連ねています。もし、楽曲だけ知りたいというかたがいらっしゃいましたら、飛ばし読みしてもらっても構いません。

僕の知っている剛さんならば、僕の無駄が沢山盛り込まれている長文も、まあ許してくれると思い書いておりますので…ご理解の程を…。

 

僕は剛さんと、2000年からファイブ・ディーという音楽事務所でご一緒させていただくことになり。ファイブ・ディー時代は、主に剛さんのアシスタントを担当しておりました。数年後、ファイブ・ディーを離れてからも、様々な場面で関わることもありましたが、最後にお会いしたのは2013年頃だと記憶しています。それから、約10年。このような形で剛さんと再会することになるとは…。それも僕より長きに渡って深い繋がりを築いてこられた関係者の皆様が集う『偲ぶ会』に、音楽プロデューサーであった“佐藤剛”を送る場で、僕が、音楽を鳴らす役割を担うことになるとは。感謝極まりないとともに、“ほんと、僕でいいのか?”という。それでも、このような場を与えて頂いた関係者各位、及び、見えざる力で僕を誘ってくれた、剛さんに改めて、御礼申し上げます。

 

剛さんとの出逢いは突然でした。

 

きっけは、中村一義というアーティストでした。

 

当時、CDショップ『WAVE』のロック&ポップス担当をしておりながら、“天才”といわれた中村一義の音楽にとてつもない衝撃を受けて。90年代の邦楽アーティストも色々と聴くようになり。かの田中宗一郎氏編集長の『snoozer』を読み漁り、洋楽・邦楽・ジャンル関係無く、“今の時代に鳴り響くロックンロール、ポップミュージック”の全てを聴き手として受け取り。紙面と連動する形でコーナー展開したり。中村一義が作品をリリースする度に、全ての音楽好きリスナーに向けて、洋楽好きな人にも。ロックを聴かない人にも。『snoozer』という雑誌の持つ良い意味での雑多性の力を借りて、彼の音楽を紹介し続けていました。

 

そして、時は、2000年。中村一義が『ERA』なるアルバムをリリース。この作品の素晴らしさを僕の言葉で伝えたいと言う衝動に駆られて、誰の許可も得ず、勝手に「『ERA』全曲解説」というフリーペーパーを作成(後にネット上に掲載したアーカイブこちらにあります)。とはいっても、冊子のような大仰なものを作るのでは無く、ただただ白紙に文字を書き連ねて印刷して試聴機の横に置いて、“ご自由にお持ち帰り下さい”というような超アナログな粗雑な形で言葉を認めた、想いを込めたものを配布することにしました。

 

そもそもこんなことする僕なんで、言わずもがな、幼少期から音楽大好きな男で。学生時代から、アマチュアバンドでドラムやギターをやったりしてて。音楽に携わる仕事がしたくて、アパレル業界からCDショップに転職したという経歴。とはいえ、アーティストにはなれない・なる器じゃないと、諦念。それよりも世にある無数の音楽を聴き漁り、自分が良いと思う音楽を流し伝え、さらに言葉に記して一人でも多くの人にCDを手にしてもらい、本物の音楽を伝え広げたいという欲求を果たすため、DJとして、さらに、“物書き”としてのライター業に興味を持ち。CDショップに入社して、小売店という最前線で働いて、そんな夢を果たすべく野望を持っていました。

 

個人的な内容、書きすぎ、長くなる、閑話休題

 

『ERA全曲解説』のことに話を戻します。このフリーペーパーが、とある中村一義ファンの手元に届くこととなり。当時、SNSなんぞなかった時代。「BBS」というものがありまして。そこで僕らは見知らぬ人たちと交流を図っておりました(※知らない人はこちら)。その方が、事務所オフィシャルの「BBS」に“CDショップに保坂さんという人が『ERA全曲解説』なるものをフリーペーパーで配布していて…”という投稿をしてくれまして。それを目にした僕は、感極まり。投稿にレスをしつつ。メルアドも公開していたので、その方に直接御礼を伝えたのです。そうしたら、その方から返信が。“中村君の事務所の社長?という方から、『ERA全曲解説』を読みたいから送って欲しいと言う連絡がありました”と。いやはやそれならば、僕から直接連絡をさせて下さいっていうことで、事務所の社長に僕から直接『ERA全曲解説』をお送りすることになり。折り返し社長からご連絡、あり。“直接会いたい”と…。それが、佐藤剛氏。あの剛さんであることは知る由もなく…。

 

なんでこんな僕に会いたいのか?わからず。どちらかといえば恐怖。緊張です。単なるCDショップの店員に会いたいなんて…。

 

たしか、新宿のとある喫茶店だったと記憶しています。しかし、何を話したか?忘れました(笑)。あまりの緊張と、僕と会ってなにをしようとしているのか?不安のまま会話は進んで行きました。ただ、ひとつだけ覚えている言葉があります。

“君、プロデューサーになりたいと思わない?”

いきなりです。そんなこと思ってませんでした。

プロデューサー?って何?でした。

しかし、即答しました。

“はい!なりたいです!!”と。

“じゃあ、いつでもいいから事務所に来て”と。

それがファイブ・ディーです。

 

剛さんとのこの出逢いで、僕の人生が様変わりしました。

 

ファイブ・ディーに入ってからは、剛さんのアシスタントとして常に剛さんの傍にいながら、様々なものを吸収しつつ、想像を超える沢山のこと。音楽事務所のスタッフとして行う多種多様なこと。事務所スタッフを超えること(DJ保坂壮彦がスタートしたのもファイブ・ディーに入ったことがきっかけです)。など。書き切れないほどの沢山の出来事がありました。その後、ファイブ・ディーを離れることとなりますが、剛さんに音楽業界の世界に誘われたことで、その後、今に至るまでの自分の人生が形成されたと言っても過言ではありません。

思い起こせば、剛さんに褒められたことよりも、怒られたことの方が多かったかも知れません。当たり前です。右も左もわからないド素人でしたから。そんな輩を連れ込んだのは剛さんでしょ?と矛盾を感じることも多々ありました。それでも剛さんの独自の感性から生まれる、音楽に対する愛には僕の感性と通じるものが沢山ありました。だからこそ、この僕に声をかけてくれたのだと思います。音楽の在り方、音楽の創り方、音楽の聴き方。全て学びました。全てが、僕の音楽観からしても、心や魂で共有できるものでした。学びながら叱咤激励されながら、音楽で会話出来ていたのかも知れません。音楽で共感できていたからこそ、剛さんを好きで愛することが出来たと思います。

 

もし、剛さんがいなければ、今の僕はここにいません。

 

いや、剛さんと出逢って無くてもそれなりの人生を歩んでいたかも知れません。

 

しかし、出逢ったからこその素晴らしい人生を歩んで来れたと思います。

 

改めて閑話休題

本題に戻ります。

 

今回の『偲ぶ会』で『音楽担当』を遂行するにあたって、「剛さんが影響を受けた音楽」と「剛さんがプロデュースした音楽」をセレクトする作業から始まりました。僕が直接剛さんと関わった年数は、彼の人生の経った数年しかありません。それ以外の剛さんの軌跡を様々な関係者の方々から教えて頂きながら…。

特に当日配られた冊子。「佐藤剛 1952 - 2023」の年表にはかなり助けを頂きました(編集に携わったみなさま感謝の意を捧げます)。それらをもとに、僕なりに、いや、剛さんだったらこうだろう…という想いを込めてセレクトしました。そして、当日、足を運んで下さった皆様が『佐藤剛』を偲ぶこと。各々の想い出を振り返られるように、音楽を介在として滞りなく、空間を淀みなく、心地よく、邪魔にならないように。むしろ、音楽が鳴っていることでさらに剛さんへの想いをより深められるように、『音楽担当』を成し遂げました。

当日のタイムテーブルの都合上、事前にセレクトした音楽全てを流すことは出来ませんでした。それでも、セレクトする作業自体が僕の中ではとても重要で。剛さんの生涯を音楽で旅するような。勝手に剛さんの音楽遍歴を一気に体感するような経験をさせていただいたこと。誰も経験できないことを仰せつかったこと、本当に感謝します。

 

以下、当日用に作成したプレイリストを2つ公開します。「佐藤剛『偲ぶ会』1/2」が「剛さんが影響を受けた音楽」で、「佐藤剛『偲ぶ会』2/2」が「剛さんがプロデュースした音楽」になります。2つとも大まかに年代順にセレクトしておりますが、基本、順不同です。さらに、この楽曲の中から何を流したか?は敢えて記載しませんし、これが“佐藤剛のすべてだ”とも断言できません。剛さんを知る沢山のみなさまのご意見を頂きつつも、あくまでも僕がセレクトしたものなので、どうしたって独断と偏見は入り込んでしまっています。あの曲やあの人がいない、ともなるでしょう。それもこれも踏まえて、ご理解いただきますようお願い申し上げます。
さらに、サブスクで配信されていない音楽もセレクトしました。それらの楽曲はこのプレイリストの下に記載させて頂きます(amazonYouTubeに音源があるものはリンクを貼ってます)。こちらもご理解頂ければ幸いです。

open.spotify.com

【サブスクで配信されていない音楽でセレクトしたもの】

・SWEET PIANO~POPULAR STANDARD / 中村八大

 ※このアルバムからは、複数曲セレクトしました。

黄昏のビギン/ ちあきなおみ

・Que Sera Sera/Super Bad
・ホッパーとポッパー/中村一義
4 little joeys/Kiiiiiii
ファイト!/アナム&マキ
ちぎれた愛/西城秀樹
ブルースカイブルー/西城秀樹
カタログ/西城秀樹

 

以上です。

剛さんありがとうございます。

音楽は永遠です。

ならば、剛さんも永遠です。

だから、僕は、音楽を愛し続けます。

 

これからも、剛さんを、愛し続けます。

 

 

 

元ファイブ・ディー

佐藤剛のアシスタント

保坂壮彦